YouTubeの練習動画より大切なこと──記録を伸ばすための「基礎基本」を現役コーチが解説

YouTubeの練習動画より大切なこと──記録を伸ばすための「基礎基本」を現役コーチが解説

「YouTubeで見た練習をやらせているのに、なかなか記録が伸びない…」

そんな悩みを持つ保護者の方が増えています。今の時代、スマホひとつで一流選手のトレーニング動画が見放題。お子さんが「これをやってみたい」と持ってくることも多いのではないでしょうか。

しかし私はコーチとして、はっきり伝えたいことがあります。

「YouTubeで流れている練習の多くは、応用編です。」

基礎基本の土台がないまま応用をやっても、記録は伸びません。それどころか、フォームが崩れたり怪我のリスクが上がることもあります。まずは基礎を徹底すること。これが記録を伸ばす最短ルートです。

目次

なぜ「基礎基本」が最も大切なのか

YouTubeには確かに素晴らしい練習動画がたくさんあります。しかしその多くは、すでに基礎が身についている選手向けの「応用トレーニング」です。

例えば、正しい姿勢や接地ができていない状態でスピードトレーニングをしても、悪いフォームのまま速く動く練習をしているだけです。これでは記録は伸びず、むしろ怪我のリスクが高まります。

家を建てるときに基礎工事が最も重要なように、陸上競技も基礎の土台がしっかりしていて初めて応用が活きてきます。指導をしていて記録が伸びる選手に共通しているのは、派手な練習より地味な基礎を丁寧にこなしていることです。

中学生が徹底すべき4つの基礎基本

① 姿勢作り──すべての土台

走りの基本中の基本が「姿勢」です。正しい姿勢なくして、速く走ることはできません。

良い走りの姿勢のポイントは以下の通りです。

  • 頭のてっぺんから糸で引っ張られているようなまっすぐな体幹
  • 軽く前傾(お辞儀するような傾き)
  • 肩の力を抜いてリラックス
  • 視線はまっすぐ前方へ
  • 骨盤が後ろに倒れていない(お尻が落ちていない)

多くの中学生に見られる悪い姿勢は「のけぞり」と「骨盤後傾」です。上体が後ろに倒れたり、お尻が落ちた状態で走っていると、いくら練習してもタイムは伸びません。

自宅でできる確認方法:壁に背中・お尻・かかとをつけて立ち、腰の隙間が手のひら1枚分程度あれば良い姿勢の目安です。隙間が大きすぎる場合は反り腰になっています。

② 腕振り──下半身の動きを引き出す

「走りは足だけ」と思っている方も多いですが、腕振りは走りの大きなエンジンです。正しい腕振りが下半身の動きを引き出し、推進力を生み出します。

正しい腕振りのポイントは以下の通りです。

  • 肘を約90度に曲げる
  • 肩を支点にして前後にしっかり振る
  • 手は軽く握る(グーでもパーでもなく、卵を持つような感覚)
  • 腕を身体の前で交差させない
  • 肩に力を入れない・上がらないようにする

よくある間違いは「腕を前に出すだけ」の振り方です。後ろにしっかり引くことで、反動で自然と前に出てきます。後ろへの引きを意識してみてください。

自宅でできる練習:立ったままで腕振りだけを練習します。リズムよく前後に振り、肩が上がらないよう意識してください。1日3分でも続けると感覚が身につきます。

③ 接地──スピードを生み出す地面との関係

接地とは、足が地面に触れる瞬間のことです。この接地の仕方が、走りのスピードと効率を大きく左右します。

正しい接地のポイントは以下の通りです。

  • 足の前側(母指球・フォアフット)で地面に触れる
  • 体の真下に近い位置で接地する(前に踏み出しすぎない)
  • 接地時間を短くする(地面を素早く押す)
  • 地面をつかむのではなく、押す感覚

かかとから着地する「ヒールストライク」は、ブレーキをかけながら走っているような状態です。特に中学生に多く見られるので、意識して改善しましょう。

ただし、接地は急に変えようとするとふくらはぎや足首に負担がかかります。少しずつ意識を変えていくことが大切です。

④ ミニハードル走──基礎を身につける最強の練習

ミニハードル(ラダーではなく小さなハードル)を使った練習は、姿勢・腕振り・接地・ピッチなど走りの基礎を同時に鍛えられる非常に効果的な練習です。

私が指導する際も、まずミニハードルを使った基礎練習から始めます。地味に見えますが、これをしっかりやっている選手は確実に記録が伸びていきます。

ミニハードル走の効果:

  • 足を高く上げる動作(ニーアップ)の習得
  • リズムよく素早く接地する感覚づくり
  • 腕振りと足の動きの連動
  • 正しい姿勢を保ちながら動く体幹の強化

ミニハードルがない場合:ラインテープやペットボトルのキャップを地面に並べて代用できます。まずは5〜6個並べて、リズムよく跨ぐ練習から始めてみてください。

保護者ができるサポート

「難しそうで、親には教えられない」と感じた方もいるかもしれません。大丈夫です。保護者が直接技術を教える必要はありません。

保護者にできる最大のサポートは「基礎練習を続けられる環境を作ること」です。

  • 「地味な練習でも意味があるよ」と伝え続ける
  • YouTubeで派手な練習を見て焦っているときは「まずは基礎が大事」と声をかける
  • ミニハードルなどの練習道具を揃えてあげる(1本500円前後から購入可能)
  • 基礎練習を継続できたことを褒める

子どもは「地味な練習より楽しそうな練習」に目が向きがちです。しかし基礎を積み重ねた先に、大きな記録の伸びが待っています。保護者の方が「基礎が大事」という価値観を持ってサポートしてあげることが、子どもの成長を大きく後押しします。

まとめ──地味な基礎が、大きな記録を生む

  • YouTubeの練習動画の多くは「応用編」。基礎なしには活かせない
  • まず徹底すべき基礎は「姿勢・腕振り・接地・ミニハードル走」の4つ
  • 地味に見える基礎練習を継続した選手が、確実に記録を伸ばす
  • 保護者は「基礎を続けられる環境づくり」と「継続を認める声かけ」でサポートする

派手な練習より、地道な基礎。これが記録を伸ばす最短ルートです。お子さんと一緒に、まずは基礎基本から丁寧に積み上げていきましょう。

──テンコーチ

基礎を支える体づくりについてはこちらも参考にしてください。
→ 中学生アスリートの慢性的な怪我は「食事」が原因かもしれない

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この記事を書いた人

現役陸上選手・コーチ歴6年。全国大会6位入賞・地区大会優勝の実績を持つ。園児〜小学生を中心に指導しながら、学生アスリートとその保護者をサポートする情報を発信中。

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