中学生アスリートの慢性的な怪我は「食事」が原因かもしれない──疲労骨折を3回経験したコーチが伝えたいこと

中学生アスリートの慢性的な怪我は「食事」が原因かもしれない──疲労骨折を3回経験したコーチが伝えたいこと

「うちの子、また怪我をしてしまって…」

練習を休むたびに落ち込む子どもを見て、どうしてあげればいいかわからない。そんな経験をされている保護者の方も多いのではないでしょうか。

実は私自身、中学・高校時代に疲労骨折を3回、シンスプリントも繰り返すなど、慢性的な怪我に悩まされていました。身長は高かったのですが、線が細く、食事が得意ではなかった。今思えば、体づくりに必要な栄養が圧倒的に足りていなかったのだと思います。

この記事では、同じような悩みを持つお子さんを持つ保護者の方に向けて、怪我を減らすために「食事」でできることをお伝えします。

目次

慢性的な怪我と栄養不足の深い関係

疲労骨折やシンスプリントは、練習のしすぎだけが原因ではありません。骨や筋肉を修復・強化するための栄養が不足していると、体が練習に追いつけなくなります。

特に中学生は成長期と競技力向上が重なる時期。体を作りながら激しい練習もこなさなければならないため、必要なエネルギーと栄養素は大人以上です。にもかかわらず、「食が細い」「好き嫌いが多い」「練習後に食欲がない」という子どもは少なくありません。

栄養が不足すると体の中で何が起きるのか、順を追って説明します。

まず、練習によって筋肉や骨に小さなダメージが蓄積します。通常であれば睡眠中や休息時に修復されますが、修復に必要な材料(栄養素)が足りないと修復が追いつかず、慢性的なダメージが積み重なっていきます。これが疲労骨折やシンスプリントにつながる大きな原因のひとつです。

怪我を防ぐために特に意識したい5つの栄養素

① カルシウム──骨を強くする最重要栄養素

疲労骨折の予防に直結するのがカルシウムです。成長期の中学生に必要なカルシウムは1日約900〜1000mgと言われていますが、実際にはほとんどの子どもが不足しています。

カルシウムは骨の主要成分であるだけでなく、筋肉の収縮や神経の伝達にも関わっています。不足すると骨密度が下がり、少しの衝撃でも骨にダメージが蓄積しやすくなります。

1日の目安量と食品例:

  • 牛乳コップ1杯(200ml)→ 約220mg
  • ヨーグルト1個(100g)→ 約120mg
  • 木綿豆腐半丁(150g)→ 約180mg
  • 小松菜1束(200g)→ 約340mg
  • しらす大さじ2(10g)→ 約210mg

吸収率を上げるポイント:カルシウムはビタミンDと一緒に摂ると吸収率が大幅に上がります。鮭・さんま・きのこ類にはビタミンDが豊富なので、意識して組み合わせてみてください。また、適度な日光浴も体内でビタミンDを生成するために効果的です。

吸収を妨げるものに注意:炭酸飲料やスナック菓子に含まれるリン酸はカルシウムの吸収を妨げます。練習後のご褒美に炭酸飲料を与えている場合は、牛乳や豆乳に切り替えることをおすすめします。

② タンパク質──筋肉と骨の材料になる

筋肉・骨・腱・靭帯はすべてタンパク質でできています。練習で傷ついた組織を修復し、より強い体を作るために欠かせない栄養素です。

中学生アスリートに必要なタンパク質量は体重1kgあたり1.4〜1.7gが目安です。体重50kgなら1日70〜85gが必要になります。これは一般的な中学生の推奨量より20〜30%多い量です。

タンパク質が豊富な食品(100gあたり):

  • 鶏むね肉(皮なし)→ 約23g
  • マグロ赤身 → 約26g
  • 卵1個(60g)→ 約7g
  • 納豆1パック(45g)→ 約7g
  • 木綿豆腐半丁(150g)→ 約10g
  • ギリシャヨーグルト1個(100g)→ 約10g

摂取タイミングが重要:タンパク質は練習後30分以内に摂ることで、筋肉の修復効果が最大化されます。これを「ゴールデンタイム」と呼びます。練習後すぐに食事が取れない場合は、おにぎり+ゆで卵、バナナ+牛乳などの補食を用意しておくと効果的です。

1回の食事で吸収できる量には限りがある:タンパク質は1回の食事で吸収できる量が20〜30g程度と言われています。一度にたくさん摂るより、毎食・補食でこまめに分けて摂る方が効率的です。

③ 鉄分──貧血と慢性疲労を防ぐ

特に女子選手・成長期の男子選手に多いのが鉄分不足です。「最近すぐ疲れる」「練習中に息が上がりやすい」「顔色が悪い」という場合、鉄分不足が隠れていることがあります。

鉄分は赤血球の材料となるヘモグロビンを作るために必要です。不足すると血液中の酸素運搬能力が下がり、筋肉に十分な酸素が届かなくなります。その結果、パフォーマンスの低下・疲労感の増加・怪我のリスク上昇につながります。

また、激しい運動による「溶血(足底からの衝撃で赤血球が壊れる)」や、発汗による鉄分の損失もあるため、アスリートは特に意識して摂取する必要があります。

鉄分が豊富な食品:

  • 豚レバー(50g)→ 約6.5mg(1日推奨量の約半分)
  • 牛赤身肉(100g)→ 約2.7mg
  • ほうれん草1束(200g)→ 約3.6mg
  • ひじき(乾燥10g)→ 約5.5mg
  • 納豆1パック(45g)→ 約1.7mg

吸収率を上げる組み合わせ:食品に含まれる鉄分には「ヘム鉄(肉・魚)」と「非ヘム鉄(野菜・豆類)」の2種類があります。ヘム鉄は吸収率が高く(15〜35%)、非ヘム鉄は低め(2〜8%)ですが、ビタミンCと一緒に摂ることで吸収率が2〜3倍に上がります。ほうれん草のお浸しにレモンをかける、肉料理にブロッコリーを添えるなど、意識して組み合わせてみてください。

吸収を妨げるものに注意:緑茶・紅茶・コーヒーに含まれるタンニンは鉄分の吸収を妨げます。食事中や食後すぐのお茶は控え、食後1時間ほど空けるのがおすすめです。

④ ビタミンD──カルシウムの吸収を助ける

ビタミンDはカルシウムの腸管吸収を促進する重要なビタミンです。不足するとカルシウムを十分に摂っていても骨に吸収されにくくなり、骨密度の低下につながります。

現代の子どもは屋内で過ごす時間が長く、日光浴の機会が減っているためビタミンD不足が増えています。1日15〜30分程度の日光浴(腕や脚を出した状態)で体内でのビタミンD生成が促されます。

ビタミンDが豊富な食品:

  • 鮭(80g)→ 約26μg
  • さんま(1尾)→ 約19μg
  • しらす干し(20g)→ 約6μg
  • 干しきのこ(しいたけ・5g)→ 約1.7μg
  • 卵黄(1個)→ 約1.9μg

⑤ マグネシウム──筋肉のけいれんと疲労を防ぐ

マグネシウムは300種類以上の酵素反応に関わる栄養素で、筋肉の収縮・弛緩、エネルギー産生、タンパク質合成に欠かせません。不足すると筋肉のけいれん・こむら返り・慢性的な疲労感が起きやすくなります。

激しい運動や発汗によって失われやすいため、アスリートは意識して補う必要があります。

マグネシウムが豊富な食品:

  • アーモンド(20粒・約28g)→ 約76mg
  • 豆腐(150g)→ 約57mg
  • ほうれん草(100g)→ 約69mg
  • 玄米ごはん(150g)→ 約49mg
  • バナナ(1本)→ 約32mg

食が細い子どもへの3つのアプローチ

「食べなさい」と言っても食べられない子には、量より質と回数で補う方法が効果的です。

① 3食+補食の4〜5食スタイルにする
一度にたくさん食べられない子は、練習前・練習後におにぎりやバナナ、ヨーグルトなどの補食を取り入れましょう。少量でも栄養を補えます。

② 主食を抜かない
ごはんやパンなどの炭水化物はエネルギーの源です。「太るから」と減らすのは成長期の選手には逆効果。しっかり食べることが記録アップにつながります。

③ 食べやすい形にする
スープやシチューにすると消化しやすく、野菜も肉も一度にたくさん摂れます。食欲がないときでも食べやすい形を工夫してみてください。

まとめ──食事は練習と同じくらい大切

私が中学・高校時代に繰り返していた怪我の多くは、練習のしすぎだけでなく、食事で体を作れていなかったことも大きな原因だったと今は思います。

保護者の方が食事に気を配ってあげることは、子どもの競技生活を大きく変える力があります。完璧な食事でなくていい。まずは今日の夕食に、牛乳1杯・タンパク質のおかず1品・鉄分を意識した野菜を1品加えるところから始めてみてください。

小さな積み重ねが、お子さんの体と記録を変えていきます。

──テンコーチ

怪我の予防・復帰についてはこちらも参考にしてください。
→ 怪我からの復帰で一番大切なこと

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この記事を書いた人

現役陸上選手・コーチ歴6年。全国大会6位入賞・地区大会優勝の実績を持つ。園児〜小学生を中心に指導しながら、学生アスリートとその保護者をサポートする情報を発信中。

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